南投について
香港のあと、台北での打ち合わせを経由し、サニーヒルズ発祥の地である南投に向かいました。
新幹線で一時間の台中から車で30分ちょっと、八卦山という広大な山の稜線をなぞるように走る
国道139を上がったところにあるのは、サニーヒルズ の本拠地とも言える場所です。
創始者の実家の一部を店舗として使った建物、地元農家の人達が自分たちが作った作物を販売できる市場広場、今はもう使われていない工場、そして馬が走り回る農園が広がります。
辺鄙なところにあるのにもかかわらず、週末には敷地から国道まで行列が出来るほど、沢山の人が訪れます。
実家の建物は、台湾の伝統的な三合院と呼ばれるコートヤードハウスで、中庭を囲むよう三方に住まいが配置されています。
日中はお客さんでにぎわっていますが、本当の姿は日没のあとにのみ見ることが出来ます。
まず、お母さんや近所に住んでいる親戚のおばさんたちが集まってきてお漬物を作るために、
膨大な量の生姜を剥きながら、日中の強烈な日差しで温められた空気が冷やされていくのを待ちます。その間、男たちやスタッフは各々、好きなタイミングでお母さんの作った栄養バランス満点のごはんを食べています。
リビングで少しのんびりした後に、誰が言い出すわけでもなく少しずつ中庭に集まってきます。
次第にご近所さんたちも、スクーターや自転車に乗って遣って来ると、自然に宴会が始まります。
長卓で酒をひたすら飲むもの、会話に花を咲かせるもの、少し離れたところにラウンジチェアを広げ月夜の下でうとうとするもの。
そして、誰かしらがガスバーナーを引っ張り出し、沢蟹のような小さな山のような量の蟹や、牡蠣などを炒め、ひたすらそれを食らいながらおしゃべりを続ける。子供たちも時たま大人の会話に交わりつつ、犬と戯れたり自転車に乗って遊んでいます。
乾燥した気候のせいか、日中の暑さからは想像もできない爽やかな風に吹かれながら
夜が更けていき、また誰からともなく一人、またひとりと人数が減りお開きとなります。
こんな毎日は、実に原初的で素朴ですが、東京ではなかなか目にすることのない幸せの形の一つと感じ、実に愉快で新鮮な体験でした。